発酵する出版社 #01 春が来る

木之本に移住して、9回目の春が来る。いや、もう、来ている。

2月4日、立春。5歳の息子と村の水路でガサガサ(網で魚を捕まえること)をしていたら、畦道にテントウムシを見つけた。

2月7日。溶けかけた雪の下に、フキノトウが咲いていた。

移住するまで、こんなに春が早くやってきていたなんて、知らなかった。
以前は、テレビのアナウンサーが「桜前線」を報道し始めると、なんとなく「春がくる」のを感じていたけれど。
毎年、少しずつ季節の解像度があがっていく。まるで実感のなかった「二十四節気」を体感していく。
それが、とてもうれしい。

ーーー能登半島の春も、近いだろうか。

2011年1月17日、社会人1年目。
朝日新聞神戸総局のオフィスに置かれたテレビの中では、ユーミンが「春よ、来い」をうたっていた。
その画面を見ていた上司の頬に、涙がツーとつたうのを見てしまって、目を背けた。阪神淡路大震災の取材を経験した人だった。まだその日は、春は来ていなかった。

3月11日、東北では雪が降った。
神戸から福島へと取材でとんだ私は、福島でその雪を見た。着の身着のまま避難所へ逃げてきた人たちが、寒さで凍えていた。福島第一原発が爆発した、とニュースが報道する中で、帰る足をなくした私は被災者のみなさんと一緒に避難所にとどまっていた。
そこでは、春はまだ遠い気がして、上司の涙の意味に思いを巡らせていた。

木之本には、春が来ました。
みなさんの町は、いかがですか。

てきとうレシピ01《ひろみさんのふきのとう味噌》
ふきのとうが出ていました!とご近所のひろみさんに報告すると、「ふきのとう味噌を作ってあげる」とうれしいお声かけ。早速花が開く前のふきのとうをいくつか摘んで持って行った。
季節のものって、人によって作り方が違うのがたのしい。

①ふきのとうを簡単に洗う
②沸騰したお湯に軽く塩を入れて、ふきのとうをいれる。ゆで加減は、ほうれん草と同じくらい。
③ザルにあげて、ふきのとうを冷ます。
④鍋に酒と水を同量位入れて沸かす。ふきのとうの半量くらい。沸いたらほんだしを少々。
⑤鍋に砂糖とお味噌をふきのとうと同じくらい入れて溶かしたら、刻んだふきのとうを入れる。
⑥色が悪くならないうちに火を止めて完成。

ふきのとう味噌
田舎料理

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この記事を書いた人

丘峰喫茶店/出版社能美舎

1986年生まれ、埼玉出身。新聞記者として神戸、佐賀、滋賀に赴任し、2016年退職。同年8月、がんを患い寝たきりとなった友人から、聞き書きした旅行記『「がん」と旅する飛び出し坊や』を制作したことがきっかけで版元に。長浜市へ移住後に喫茶店を開店。1児の母。

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