勝手にイカレビュー #01「OVER THE SUN〜幸せの黄色い私たち〜」と『女の答えはピッチにある』

勝手にイカレビューアイキャッチ
目次

コンテンツに溺れないためにレビューをする


昔からコンテンツが好きだった。

コンテンツと言うとわかりにくいけれど、本、ドラマ、漫画、映画、ラジオ、ニュース記事、SNSで流れるあれやこれや…。つまり情報とも言える。
どれかに特化してオタクなわけではないが、好きなもの、ぐさっと刺さったまま抜けないものはいくつも挙げられる。

だけどこの数年は特に、好きなはずのコンテンツに溺れている感覚がある。
コンテンツをあまりにも早いサイクルで消費しているからだと思う。

先週見たもの、聞いたもの、読んだものが思い出せない。
あんなに感動したはずだったけど、どんなところに感動したんだっけ?
常に脳みそがパンパンで、次から次に入ってくる情報で息継ぎもできない感じ。

コンテンツをただ消費するのではなく、血肉にするために、あるいは消化不良を起こさないために、もう少し時間をかけて咀嚼し、消化したい。
そのために感じたこと考えたことを一旦どこかに書き留められたらいいのではないか。

そんなそれなりにまじめな気持ちをきっかけに、この「勝手にイカレビュー」を立ち上げてみた。
他のイカハッチンメンバーからどんなレビューが出てくるのかも楽しみである。

(※自由な人たちなのでコンテンツに限らず、商品レビューとかその他のいろんなレビューもあると思われます。)

レビューのコーナーを設けるもう一つの理由として。

「好き」がたくさんあることは生きやすさにつながる。
いろんな価値観を発見することも生きやすさにつながる。

…というのが私の持論なので、みんなの好きないろいろや価値観をもっと知りたいというのもある。

そして単純におすすめのドラマとか知りたい。
最高にハマって2周した「マイ・ディア・ミスター」の次に観るべき韓国ドラマはなんですか?

さて、長い前置きを書き終えたので、レビューに入ります。

「OVER THE SUN〜幸せの黄色い私たち〜」


「よくぞ、よくぞ金曜日まで辿り着きました。おつかれさん」

このセリフに毎週癒され、鼓舞されている互助会員のみなさん、おはこんばんちは。

「なんのこっちゃ」なみなさんに説明すると、これは、毎週金曜日に配信されているポッドキャスト番組OVER THE SUNの冒頭にある恒例の労いである。

この労いを皮切りに、毎週およそ30分もとい1時間、コラムニストのジェーン・スーさんとフリーアナウンサー堀井美香さんが好きなように語らうという、「オバサンの、オバサンによる、オバサンのための」コンテンツだ。私以外のイカハッチンメンバーにも互助会員(=この番組のファン)がいる。

番組本編の面白さもスクロールが追いつかないくらい語りたいところだが(試しに聴いてみてね)、私が今回レビューしたいのは、この番組が2024年1月に2日間開催したリアルイベント「幸せの黄色い私たち」のことである。

何が披露されるのかさっぱり明かされない状態なのに、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)の2000席が両日完売し、ライブビューイング、配信までされたこのイベント。それだけでも互助会員の熱さがわかっていただけるのではないか。オバサンがオバサンに熱狂しているのだ。

「Get Wild」に涙する理由


私は配信チケットを購入して両日参加。結果、当初チケット購入を迷っていた自分に「買え!いいから買え!」と背中をバンバン叩きながら言いに行きたい面白さだった。

特に言いたいのは2日目の「はしゃぐ」の回。


ざっくりと流れを書くと、

スーさん、堀井さんによる演劇(2人とも当然演技のプロではない)
 スーさんによるダンス(プロのダンサーではない)
 堀井さんによる手品(プロの(以下略))
 2人のツインドラムをバックに(プロの(同))、「千の風になって」でお馴染みの秋川雅史さんが「Get Wild」を熱唱し大団円


こんな感じだった。DVD化されることがあったらぜひ観てほしいなぁ。

文字で見ると「なんだそりゃ」かもしれないのだが、私はiPadから流れる雄大なボーカル、楽しそうに跳ねるドラムの「Get Wild」を聴きながら、涙が止まらなかった。
ニヤニヤも止まらなかった。

スーさんと堀井さんが費やしたたくさんの時間と体力と気力を思い、2人の「やってみたかったことをやってやろう」という勇気と気概を思い、比喩ではなく、胸が熱くなった。

なぜ、新たに挑戦する一生懸命な2人の姿にこんなにも涙が出るんだろうか。

その理由が書いてあったこの本を紹介したい。

『女の答えはピッチにある 女子サッカーが私に教えてくれたこと』


『女の答えはピッチにある』(キム・ホンビ著、小山内園子訳/白水社)

韓国で「真のフェミ本」と話題になった、というエッセイ本だ。

サッカー初心者の筆者が地元のアマチュア女子チームに入り、サッカーと、女性たちの連帯を学んでいく体験記。文章がめちゃくちゃに面白くて、サッカー知識ゼロでまったく問題なし。むしろその方が面白いんじゃないかと思う。爆笑できます。

私が大好きなシーン。

この本の最後の方で、焼肉屋で働く40代のミスクさんが新メンバーとして加わる。
彼女は学生の頃は球技が得意だったのに、いつの間にかスポーツをする機会を失っていて、サッカーに楽しそうに通う夫や息子を見て「男がすっごくうらやましくて!」と語る。

「…(略)…それがやだ、アタシみたいな女でもサッカーしてるっていうじゃない!? ものすごく驚いたのよ! 本当、世の中のことなんにも知らないで、狭い世界で、目の前のことばっかりに追われていたんだなってさ。すぐにドキドキしたんだよね。こんなこと言うと笑われるかもしれないけど、そうか、アタシ、今までこういうことを待ちわびてたんだ、って」

『女の答えはピッチにある』(キム・ホンビ著、小山内園子訳/白水社)

お店とサッカーでヘトヘトになりながらも入団2週間が経ったミスクさん。お店に嫌な客が来てもイライラしないのだと話す。

「…(略)…なぜかそんなにイライラしないのよ、ハハハ。こう言う感じ? おいオマエら、アタシをただの、そんじょそこらの食堂のオバチャンだと思われたら困るよ、アタシゃ実は、サッカーしてる女なんだからね! って。そう心のなかで思ってたら自然に胸を張ってんのよ!」

『女の答えはピッチにある』(キム・ホンビ著、小山内園子訳/白水社)

痺れませんか?

この新たな出会いへのトキメキと、自分に対して芽生える自信。
これを、私はジェーン・スーさんと堀井美香さんのツインドラムから感じたんじゃないだろうか。「アタシゃ実は、ドラム叩いてる女なんだからね!」と。

さらに、この本の訳者あとがきで紹介されていた『フィフティ・ピープル』著者のチョン・セランさんによる推薦のことばを孫引きする。

「それがどんな対象であれ、本腰を入れて愛するという行為は美しい。結果を計算せず、持てるすべてを出しきって体当たりするその行為は、ときに分厚い壁に亀裂を作り、亀裂は開かれた門になる。このエッセイは…(略)…サッカーを比喩にして女の丸ごとの体、丸ごとの人生、丸ごとの世界をつづっているのだ。著者が…(略)…一段ごとに成長を重ねていくとき、それまで知らなかった未知の領域が押し開かれ、読む者の心にも激しい地殻変動が起きる。走りたい、強くなりたい、許されていなかったものを手に入れたい。」

『女の答えはピッチにある』訳者あとがき(キム・ホンビ著、小山内園子訳/白水社)

私は今回のスーさんと堀井さんに地殻変動を起こされたのだ。
いやーすごい。かっこいい。

きっとこれをきっかけに、たくさんの互助会員がそれぞれに入った亀裂から、新たな欲望を発見して、それぞれのピッチで走り回るんだなぁと、感動している。
私もどこかのピッチで走り回りたい。楽器もやってみたいし、新しいスポーツか格闘技もいいな。絵を描くのも楽しそう。

そんなことを思いながら、今日も「Get Wild」を口ずさんでいる。

Twitterでも、いろいろな感想をつぶやいています。
@sakura_funazaki

あさい

私も互助会委員の一人。スーさんミカさんのチャレンジに笑いながらも感動しちゃった。こんな素敵な人生の先輩方がいると、36歳の私、これからもたっくさんチャレンジして人生楽しんでいきたいって心の底から思えるな〜。そんな私の庭にはもうすぐヒヤスンスが咲きます。
大空はばたく時SO ヒヤスンス〜〜♩

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ライター/ 地域おこし協力隊(移住促進担当)
埼玉県本庄市出身。大学卒業後、新聞記者として社会福祉、司法、厚生労働省、東日本大震災などの取材を6年間経験。その後マーケティング系IT企業広報を経て、2021年夏に滋賀県長浜市へ移住。限界集落の古民家で夫、犬、猫と暮らす。サッカーと落語が好き。1991年生まれ。

目次