日記「夜中のワカサギすくい」浅井千穂

長浜の冬にはワカサギ釣りで盛り上がる場所がある、余呉湖だ。
お金を払って寒い中、凍える手で虫を針に付け、小さな魚ワカサギを釣るのだ。
私も長浜に移住して何年か続けてワカサギ釣りに出かけた。
ボウズの時もあった。
お金を払って、寒い中、ボウズだ。
何シーズンかを経験してワカサギ釣りに行くのはやめた。

だが昨年、ワカサギすくいというものがあるのを知った。
調べてみればユーチューバー達の中でも流行っているらしい。

当時妊娠中で、お腹に子を宿しながらも狩猟本能に火がついてしまった私は、
比較的安全な場所で、一人で網とヘッドライトを持って出かけた。

「波打ち際にね、いっぱい寄ってくるから網で簡単にすくえるよ」
そう聞いていたのに、聞いていたのに1匹も見えないじゃないか。
たまたま出会った釣り人さんが他のワカサギすくいスポットを教えてくれたので行ってみた。
見当たらない。
仕方ないからその日は諦めて別の日に出かけた。

ちょっと夜中は寂しかったので友人を誘い出かけた。
(夫は興味がないのだ)
またボウズ。
夜な夜な出かける妊婦に流石に夫から「危ないからやめなよ」と注意が入ったので、
2023年のワカサギすくいは0匹で終わった。

そして2024年2月、ワカサギすくいシーズン到来。
0歳児の子どもと夫が寝たあとソロリソロリと夜の琵琶湖へ出かけた。

1回目はイカメンバーのすみれさんと友人を誘い、3~40代男女4人が21時の琵琶湖岸に集合。
ワカサギは姿を見せてくれず次のスポットへ向かおうとすると、名古屋ナンバーの車から人が降りてきた。
なんと名古屋から家族4人でわざわざワカサギすくいのためだけに日帰りで来たという。
名古屋ファミリーに私たちが次に向かうワカサギスポットを教え、電話番号も交換し一旦サヨナラした。

さて、次のスポットについたがワカサギは見当たらない。
ワカサギは見当たらないが、22時の琵琶湖岸は大盛り上がりだった。

県外ナンバーの車が5〜6台。
中にはテントを張って泊まり込みの強者もいた。

そのうちの1グループに話を聞くと米原から北上して、次は高島の方へと向かうらしい。
なんという情熱だろうか。
そうこうしていると、名古屋ファミリーも到着。
みんなで1時間ほど探していると1匹いた!
が、誰も掴まえられず結局ボウズ。
なんとか粘ったがこの日もそのまま解散となった。

さぁさぁ、ここで諦めるか否か。
いやいや、お魚相手なのだからこんなことで諦めていられるものか。

また別の日、2024年2回目のワカサギすくいはイカメンバーまさみさん親子を誘って出かけた。
この日は新月。
星がとても綺麗だった。
平日の夜ということもあり、私たちの他は誰もいない。

湖岸に降りて見てみるといた!
満点の星空の下、心躍りながら網を琵琶湖に振り下ろした。

ようやく、ようやく念願のワカサギすくいができた。
36歳、夜の琵琶湖岸で涙が出そうだった。

30分くらいだろうか、4匹ほどすくえたところで見当たらなくなってしまった。

そこでまさみさん親子と休憩し、夜空を見上げながらチョコレートと温かい飲み物をいただいた。
チョコレートを口の中で溶かしながら、星を見ていたらキラッと光るものが。
大声で「流れ星や!」と叫んでしまった。

妊娠前は敦賀へ夜釣りに出かけることもあり、夜空をボーッと眺めることはよくしていた。
だが最近は子どもとのタイムスケジュールで夜空を眺めることなんてなく、
久しぶりの夜遊びと星空と流れ星に今日はもう満点だと思った。

休憩を終えてまたみんなでワカサギすくいをする。
まさみさん親子を見ながら、私もいつか我が子と水の中の魚達とこうやって遊べる日が来るのかと思うと、とても楽しみだなと心が躍った。

1時間ちょっとで6匹すくえた。
解散して、我が家へソロリソロリと帰っていった。

6匹だし、もう一人で食べちゃおう。

片栗粉で唐揚げにし、あらかじめ冷やしておいたビールと一緒に味わった。
隣の部屋では夫と我が子が寝ている。
私の夜遊びは完璧なものとなった。

次は満月の琵琶湖へ遊びに行こう。
数年後には我が子も一緒に。

夜中の琵琶湖ですくったワカサギ




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この記事を書いた人

浅井 千穂のアバター 浅井 千穂 浅井千穂写真事務所

1987年生まれ、兵庫県姫路市出身。10歳の頃にフィルムカメラと出会う。大学進学とともに滋賀県彦根市へ。卒業後も滋賀県に住みたいと思い、写真館に三年間勤務しながら長浜で暮らす。2013年に独立。家族のハレの日や風景を、ドキュメンタリー的に写真に残すことを中心に写真撮影を仕事としている。夫と娘と猫2匹、フトアゴヒゲトカゲと暮らしている。

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